「癒し」のシトローエン

世にも珍しいBibホイールをシトローエン・サクソに履かせているlfoさんのところよりのトラバ。

 その中で紹介されていたのが、Hackers' Guide to Citroenというページ。

abstract
現実社会に生きるハッカーが抱えるせつなさに対するシトローエンの「癒し」機能性について考察を行う。

現状考察: せつない人々のせつなさ

智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角此の世は住み難い。

この小冊子をお読みのかたは、なんらかのhack mindを心に秘めた、あるいは丸出しにして会社や家族や町内でアレゲな状況を招いている人々だと思われる。これら「内なる衝動」をお持ちの向きを仮に「ハッカー」と定義するならば、今日のハッカーは、皆やるせない「せつなさ」を抱えている。 上記の一節はとある有名な小説からの抜粋であるが、この卓見に思わずうなずかれる方も多いのではないだろうか。われわれは一社会人として、会社や任務や家族との接点において、秘めた思いと現実との調整に関する、何らかの鬩ぎ合いを日々送っている。せつなさはここから生まれるのである。



現実との接点と摩擦
あらゆる現実のムーブメントは、何らかの成功を目指して行われる。一般の「カイシャ」は商業組織であるので、その成功の重点は商業的成功に置かれる。しかもこのせちがらい世の中、それはしばしば中期的から短期的成功を意味することが多い。これを短く表現するとこうなる「すぐ売れるやつを作れ」。

技術者は、そのスキル習得の過程において、「いいもの」と「売れるもの」は時に異なることを知っている。この両者の幸福な結婚こそが良いプロダクトなのであるが、悲しいかな現実にそうした事例はむしろ稀である。マーケティング先行によるせつなさを例証してみよう。



表面のみに因われるマーケティング
商品のよいデザイン、カッコイイ外見は重要であって、心の落ち着きをもたらすし、「買っちゃったぜいーだろーヘヘヘー」はこれなしには満たされない。 しかし、さらにこれを支えるのが、実際に使い込んでみての操作性、使い心地であって、ユーザの側に立った正しい技術の行使によってそれはもたらされる。

しかし実際は、プロジェクトのリソースは店頭での受け、音、色、広告のbuzzword、脇に立っている説明員のねえちゃんの人件費ばかりに力が注がれて、実際に購入してみると使いにくい、電池持たない、カッコばっか、要するに使えない製品でこの世はあふれている。 一夜限りの恋ならよい。しかし、いざ生活を一緒に営なまんとするものがこれではせつないのである。



バージョンのインフレーション
「今回の機能追加は○○対応だけだからバージョン2.0から2.1にするだけだって? アホか。そんなもん誰も見向きもしないだろ。お前はマーケティングがわかってない。こういうときは××××バージョン2001スペシャル限定版ウルトラリミックス・バージョン8.0とかにするの。内容なんかどうでもいいからニューバージョンをばんばん出すのが勝ちなんだよ。もういい、おれがやっとく」



癒しを求める技術者の良心
このような商品であっても、これを世に送り出すについては技術者の献身がある。しかし、これらは彼らの技術的良心の発露ではない。むしろ消費者を愚弄する方向の行為である。大宅壮一の言葉を借りるまでもなく、「一億総白痴化」の片棒をかつぐ行為なのである。

「これじゃあ売れない」
「そんな仕様は理解されない」
「そんな練習しないと使えないようなものはダメだ」
「こんな機能を入れて間に合うのか」
「サポートが困難」
前向きな提案が潰され、良心的な試みが評価されず、こうして白痴化の方向へ加担せざるを得なくなったとき、技術者の良心は傷つき、癒しを求める。



さまよえる魂
ハッカーの行動原理はinteresting、つまり「興味ぶかい」さらにいえば「オモシロイ」である。こんなことをサックリできたら面白いじゃん。うひひこんなのを実装してるやつがいるぜおれもいじってみよう。 しかし現実の商業組織において、長期的なメリットを理解してハッカーにこのようなトライアルの場であるplaypenを与えているところは少ない。哺乳類に空気が、魚に水が必要なように、絶えなき知的好奇心こそがハッカーの生きる源なのである。これを束縛されたpoor soulたちは、癒しを求める。

と、シトローエンのハナシに入る前の前フリを引用させていただいた。

クルマの開発をしてると本当にこの手のハナシにブチ当たる。
ヲレも大嫌いなメーカー*1の大嫌いな車種の設計やってるときなんか
「だれがこんなもん乗るか!」
って気持ちでやっていた。 

 そもそもその会社のクルマ、特にハコ*2ものはポリシーが全くなく、キャッチーさだけは世界一。ウケりゃいいんだよ!ウケりゃ!の世界。ここでいうところの表面のみにとらわれるマーケティング。まあ、それをパクリまくる三河の昔は挙母(ころも)と言われた所にある大メーカー様にくらべりゃそれでもマシだが。
 
 兎に角、技術者のハシクレとしては「癒し」が欲しい。

 そして、ヲレはこうしてフランス車に乗っているわけだが、血中フランス濃度の低いとされてるこの206*3でもかなり癒される部分はある。

 ヲレの大嫌いな2メーカーのそれでも特にヲレと懇意にしていただいている技術者の中にも当然良心と言うものは存在し、常に良心の呵責と日々葛藤しつつモノ造りをしてるのだ。
 彼らはそこの社員であるから、当然通勤用としてそのメーカーのクルマを所有する一方でプライベートで乗るのが、フランス車。特にシトローエンの割合が高い。

 やはり彼らも「癒し」を求めて乗るのだ。

 それを見事に説明してくれたのがこのページだ。

 かなりギャグのネタが電算ネタだったり、鉄道ネタだったり、果てはスネークマンショーを持ち出したりするので、ヲレ的には抱腹絶倒モンだが、わからない人でもそれなりに楽しめると思う。

 このページ、是非読んでいただきたい。

*1:このBlogをずーっと読んでいただいている貴兄にはお分かりであろう。東京は南青山一丁目に本社のあるあの会社だ。

*2:いわゆるミニバンとかミニミニバンとかいった類のものだ

*3:しかもイギリスはライトン工場製だし